disconstruction of the felicity

9月15日

今日の不眠を除けば、過度に食事を摂り、ふつふつと沸いた興味を放埓に享受しているうちに、精神の安閑を得られた。体の中枢にある歯車が高速で回転し、鈍い金属の擦れる音を鳴らして、抱えきれないほどのエネルギーを持て余しているようだった。やるべき事…

記録『思慕のひとを眼前にして』

その方の顔を近くで見たのは、これが初めてだった。生身の肌が皮脂でぎらついて、艶かしく発光するばかりでなく、そこからわかる思春期らしさといふものが太陽の元で粛然と居座っていた。出来の良い顔立ちが笑みで崩れても悠々たる魅力が光っていた。ふと油…

残暑(恋日記)

刹那に満たない一瞥の中で表象された人間らしい息遣いや視線による放熱が、砂浜を打つ波のように押し寄せる。私は現に、清らかな肌、熟れたばかりの果実色の頬を、この目で捉えている事が信じられなかった。汗をかかない体質なのか脂気もない。私は視界に入…

思想集

・人は社会の利益をあげるために幸せにならなければならない→そのために犯罪を犯しても構わないが、公共の福祉を超えたものは法律によって縛られなければならない→つまり極端に言えば、殺人でしか快楽を得られないのなら、人を殺めそのまま罰を受けるべきで…

8月29日

黎明より少し前に眠り、昼間に起きる生活を続けた今日も、先週に入れ込んだアルバイトに束縛されている。躁への原罪は重く、将来をそこに委ねてしまったがばかりに、ますます施しようのない人生になった。中途覚醒や寝つきに悩まされる最中、私は文学という…

8月28日

ついに惰性の味を覚えた私はそれを猛省することもなく、えもいわれぬ悦楽を見出した。休暇は今にも明けようとしているのに、自分だけが遠方の海に放り出されているような気がした。sabotageの旨みを覚えてしまったからだろうか。 思案の夜中、秒針だけが私の…

遺言

一応、何が起こるかわからない世の中ですので書き残しておきたいと思います。 これを読み返しているとき、私は死んでいるかもしれません。多分10・20代の死亡例を見るに、事故か自殺でしょう。私は自惚が強い方なので、皆さんの悲しむ顔をお目にかかることが…

8月26日

文章が、書けない。怠惰によって見ることのできなくなった払暁が私を競り立てる。甘い。本が、読めない。言葉は前頭葉の先で空回りする。二進数で表現されたただの信号が、文としてではなくそのまま脳に送られるようだ。 体たらくでどうしようもない人間の哀…

ダビデ像

かつて男の裸そのものに興味を示さなかった私を、これほどまでに男体に陶酔させた者がいるだろうか。もはや全てが如才なく完結しており、あの不安定な姿勢や、適度な力を感じさせる筋膜の張り、加えて男の象徴ともいえるそれですら魅力的に思えるのである。…

自叙

恣に身を涜したまゆらの快楽を味わう白河夜船刃物が転がっている 血肉が交わる 縊死への渇望は生命に収斂 きっと夢だ私は歳の階数から飛び降りる奇妙な遅延 不祥にも 罷ることすら認められず首を変形し贖えと囁く、天使の顔をした閻魔 「最近嫌な夢を見るん…

何もない。あとは死ぬだけ

8月8日

しどけない女だ。私はただ安閑と生きていきたいだけなのだが、あどけない少女の顔を脳裏に浮かべてしまう。あまりこれを恋だと認めたくない気持ちもあった。 まだ暫定的だが、受験は諦めることにした。勤勉に働き、身をやつして生きていくつもりである。そし…

8月7日

衝動的に、まさに一刹那を生きていた。許されざる大罪を犯し事に及んだ。言い換えれば、私は下戸だった。 ゆめゆめ後悔などなく、そんな私に女を愛する器はなかった。この頭痛はおそらくそれの所為だけではないだろう。様々な断片的な記憶が私の本音を露見さ…

8月6日

空は青い癖に雨が降っていた。お前まで私の中途半端な心境を真似しなくても良いのにと思った。至る所から生乾きの匂いがした。 路上ライブを見て立ち止まった。まだ演奏が始まる前の、Fenderのギターを慣れた手つきでかき鳴らす様や、細身の体にカジュアルな…

何故

恋情がわからなかった。あの時の心の激しい揺れは確かであるはずなのに、あらゆる煌めきは随分と昔のように思われた。うまく事が運ばれた記憶がなかったのを考えると、好きなのは人間ではなく、人間的な営みをしている自分自身なのではないかとすら考えた。 …

性愛の遍歴

女の悲鳴などやかましいのだから、辱める時は口をテープなどで覆うのが良い。呼気の行先が塞がれ、苦痛に屈してはふはふと息をし、それに合わせてテープの起伏がおこるさまは悲鳴よりも一層奥ゆかしい。恐怖のあまり鼻水がだらしなく垂れ、それを恥じらう様…

8月5日

最高で最悪の日だった。暴力から身を置くために遠くへと離れた。ずんずんと、熱中症を自覚しながらも、足を進めずにはいられなかった。後をつけられているか恐ろしく不安で、背後に十分注意しながら歩き続けた。また自殺を考えた。どこまでも逃げたが、結局…

クレヨンしんちゃん映画レビュー(ネタバレ有)

あらすじ 『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』公式サイト/より引用 "ノストラダムスの隣町に住むヌスットラダマスは ある予言を残していた。 「20と23が並ぶ年に 天から二つの光が降るであろう。 一つは暗黒の光…

情火

軍服を纏う男は、白黒に切り取られ、一枚の紙に刷られた。その一葉に私はこの上なく魅せられてしまって、醜い劣情を前に、写真から香る喪のエキスを嗅ぎ取った。表情からは放埒さや多少の残虐さが見られるのであった。そのいやらしい身体つきの、特筆すべき…

8月3日

前夜に死を覚悟するほどのパニック症状に襲われ涙を流し、耐え難き世を嘆き、どのように払暁を超えたのかは前述の通りである。同じくして絶望の朝を迎えた。灼熱の太陽が私の身も心までも焼き尽くし、もはや体は私の知らぬ動きをしていた。 一方で、久しぶり…

8月2日

朝には婦人科を、午後は精神科を受診した。採血の後、時間を持て余した私はサドの本を幾ページか開き、悪行と享楽へと旅立った。少女たちの不憫なさまは甚だしく私を高まらせ、ふさぎ込んだ精神を酩酊へと持ち込み、灰色の日常を楽しむことができたのが救い…

恋がしたい(猟奇性の露呈)

私は青年の肩に手を回し柔らかな唇に毒を塗った舌を捻じ込んだ。硬く張った僧帽筋の盛り上がりが情を煽り、幹のような首には電動の首輪がかかっていて、私を嗜虐の道へと駆り立てる。短く息を吸って、お互いに接吻の味を楽しもうと目を閉じると、彼の長いま…

8月1日

おかしな夢を見た。カフェのテラス席で女性が足を組み、ストローを口に咥えて座っていた。前髪をかき上げており、掘りの深いフィリピン系の顔立ちの、一際美しい目の輝きに目を取られた。私は用もなく彼女の前の席に腰を掛け適当なあいさつを交わした。 「私…

7月31日

最後の七月は、私の不能によって塗りつぶされた。性の愉しみを忘れることが恐ろしすぎるあまりに女男どもの裸体を見つめていたが、私の虹彩は内臓ではなくsilhouetteを捉え、虚しくも努力は無駄に終わった。脳内で男を殴った。こみ上げてきたものは色情では…

恐怖

性欲がない。女の裸を見たあの時の酩酊も、柔らかな皮膚に包まれた肉も、美しく伸び散らかした爪も、生命を象徴する産毛の靡きも、男の卑猥な痙攣や湿ったシャツの張り付きも、少女の折れた足も、風刺的に太陽光を反射する髪の毛の混沌も、すべて私を失望さ…

淫夢

これは著者が妄想に耽った淫らで如何わしい事の次第であり、決して実話ではなく、単なる私の性的緊張を解くための手段に過ぎない。以下は非常に淫猥かつ猟奇的なものであるため、閲覧には十分に注意を払っていただければ幸いである。

7月30日

快眠にも関わらず目が覚めた時には背中がびっしょりと汗で湿っていた。気怠さはしぶとく私の体に堆積したものの、清々しい気分でもあった。 今日の最も大きなイベントは第一志望校のオープンキャンパスで、きっと疲弊しているだろうと一講座しか取らなかった…

7月28日

レースから漏れた朝日を眺めながら、これほどまでに苦しいことはないだろうと思索に耽っていた。それは、昨朝私が死の魅惑に取り憑かれてしまったためである。その時私は高所を求めて焼け焦げたアスファルトの上を足でなぞり徘徊していた。侵入の簡単な集合…

7月29日

また悪夢を見た。女性と推定される人物が私の腹をナイフで三度刺すというものだ。血は恐ろしいほどに現実味を帯びており、初めて刺された時に私は自分の血飛沫を浴び、二度目以降は患部から噴火した血液が隆起し、すでに流れている川を辿るようにどくどくと…